BIOGRAPHY

ホールジー■Halsey(ホールジー):本名 アシュリー・フランジパーネ、ニュージャージー州ワシントン出身、20歳のソングライター、シンガー、新世代ポップ・アイコン。ポップ・スターに必要な要素全てを持ち合わせている要注目の新人。

アフリカ系アメリカ人の父と白人の母の下に生まれる。デビュー前からYouTubeでカヴァーを披露し注目を集め、16歳の時に始めたTumblerのブログには数千のフォロワーが付くなどデビュー前から影響力を持つテイスト・メイカー的な存在だった。様々な音楽と歯に衣着せぬ正直な表現の歌詞をブレンドした独自の世界観でアメリカの若者を熱狂させている。

■HPのバイオには1行のみ: “I am Halsey. I will never be anything but honest. I write songs about sex and being sad.”の一行のみ。「私は、ホールジー。私は何も特別な存在ではないわ、ただ正直なだけ。セックスと悲しいことを歌にするの」

■名前の由来: ニューヨークの地下鉄Lトレインの駅名、Halsey Street(ブルックリンとクイーンのボーダーに位置する)と本名のAshleyの回文のHalseyが由来。

■影響を受けた音楽: 父親の影響でTupac、NWA、Wu-Tang Clan、Bone Thugs N Harmony聴き、 白人の母親からはNirvana、The Cure、Gin Blossoms、Alanis Morisetteを教えてもらう。今は描かれている世界が自分と一致するラップ・ミュージック、R&Bが大好きらしい。

■高校時代:他の人が自分のことをどう思うかなんて全く気にしないアウトロー的な存在。金曜日になると電車でニューヨークに出掛け、ハチャメチャな週末を過ごし、親に見つからないようこっそり帰宅することを繰り返した。

■好きな色&数字: 好きな色は青。髪の色、作品の色に使われており、Halseyを象徴する色。好きな数字は17。右手の指にタトゥーに入れる程好きで大事な数字。

■親日派: 日本のことが大好きで、ハロー・キティの熱心なファン。ネット上で「リアル・初音ミク」と例えられることも。

2014年の半ば、ホールジー ―― ニュージャージー育ちのアシュリー・フランジペインの芸名―― はどこか不完全ながら印象深いデビュー・シングル ‘Ghost’を世に送り出した。彼女がこの曲を自主リリースしたのは、殆どすべての人の反対を押し切ってのことだった。「この業界の知り合いはみんな口を揃えて言ったわ、『だってこの曲、ブリッジから始まってるし、たったの2分34秒しかないじゃないか。これはダメだよ』って」、彼女はそう振り返る;「『どう考えてもシングル向きじゃないよ――これじゃ誰の耳にも引っかからずに素通りされちゃう』ってね」。ところがこの曲は、折しも拡大しつつあった彼女の支持層のツボに入り、瞬く間にダウンロード数を伸ばしたのである。

この自主リリースされた異色の曲――もはや惰性でしかない空虚な恋人関係に終止符を打とうという内容(♪私には隣で寝てる抜け殻をあなただとは思えない♪と彼女は歌う)――は、アシュリーの名刺代わりとなった。間もなくシリウス・レディオ(*通信衛星を使用したデジタルラジオ)でヘヴィ・ローテーションの常連となった彼女は、一躍iTunesのオルタナティヴ・ミュージック・チャートの上位に食い込み、それがレコード・レーベルの獲得競争と更なるローテーションを呼ぶこととなる――こうしたすべてが実績となり、2014年6月、アストラルワークスは ‘Ghost’を聴いた翌日に彼女との契約を決めた。無論、レーベル側が何よりの拠りどころとしたのが、ローテーションやセールスの数字ではなく、ホールジーの音楽と人間性そのものの力だったことは言うまでもない。(’Ghost’は彼女のメロディックで独特の雰囲気をまとったデビューEP “Room 93”にも収録されている)彼女のマーケティング戦略は実際たいそうシンプルなものだったと、歯に衣着せぬ物言いが持ち味のアシュリーは率直に語る:「私は自分のやれることに対してはいつも自信を持ってたから、ただそれだけ」。

その自信は勿論裏打ちがあってこそだ。アストラルワークスと契約を交わして以降、アシュリーは元々あった支持基盤に着実に勢力を上乗せし、ツイッターやビルボード誌で大いに話題をさらった。加えて、彼女のEPのプリオーダーやウェブストアの開設、2015年のツアーが発表されると、その名は世界各国でツイッターのトレンド入りを果たした。最終的にはビルボード誌のツイッター新進アーティスト・チャートで最高位第2位、同じくツイッターのトレンド・チャートで第一位を記録し、 Vevoでも「これからの1年絶対注目の20組」のひとりに挙げられた。こうした現象はアシュリーにとって初のヘッドライナー・ツアー、“The American You(th) tour”にも相乗効果をもたらし、チケットはほぼ1時間、場所によっては僅か数分のうちにソールド・アウトとなった。

アシュリーの自信は多くのファンを獲得する助けになっただけでなく、彼女のキャリアに対する積極的なアプローチにも影響している。比類なきファッション・センスと、感じるまま、思いつくままを躊躇なく口にする姿勢、そしてその発言そのもので、ソーシャル・レベルにおいて分厚く強力な支持層を築いてきたアシュリーは、両親の懇願も空しく大学進学を辞退したのだった。もっともその両親こそが、実質的には彼女に音楽に対する野心を植え付けた責任者たちだったのである。7歳の時から、「うちのママはしょっちゅう私をコンサートに連れて行ってくれたわ」と彼女は言う;「私はある意味、そのせいで学校で仲間外れになってたのよ。他のみんなは金曜日の夜にはフットボールの試合を観に行ってたのに、私はピッツバーグにロック・バンドを観に行ってたからね」。

「私が大学に行かないでミュージシャンになるんだって言ったら、みんなに驚愕されたわ、どうかしてるって」、彼女は言う。「でも私には予感があったの、きっとやれるって」。それまでに予兆は幾つもあった:彼女がピアノを習い始めたのはまだよちよち歩きの頃で、ティーンエイジャーになる前には既に児童劇団のミュージカルでずば抜けた才能を示していたのである。家の内外でも絶えず歌ってばかりいた。「14歳の時だったと思うけど、うちの弟が部屋のドアを思いっきり締めて怒鳴ったの、『うるせえぞ!ヘタクソ!』って」彼女は笑いながら回想する。「でも皮肉なことに、今じゃうちの弟は私の一番のファンなのよ」。

アメリカ北東部回廊 (*訳注:ボストンからニューヨークを経てワシントンD.C.に至る都市群を指す)一帯の様々なバーやライヴ会場でアコースティック・カヴァーのセットをプレイした後、高卒の少女はようやく‘Ghost’で自分の道を切り拓くに至り、この曲は現在までにSpotify(スポティファイ)で250万ストリーム超えを記録している。「みんな、私がもの凄い短期間でブレイクしたみたいに言うんだけど、」彼女は語る。「実際には丸2年掛かってるのよ。時にはボストンのど真ん中で朝の4時に、電話もかけられなくて、適当な知り合いにこれから家に行ってもいいかどうか、ツイッターで訊いたりしてたんだから。ミュージシャンになりたいって気持ちがあったから、そんな波乱万丈の境遇すらも何だか魅力的に思えたのよね」。

その波乱万丈ぶりは、“Room 93”の感性からも物語からも透けて見えるところだ。「どれも映画みたいでしょ――作品としてのスケールがって意味じゃなくて、私は視覚的なものが好きだし、リアルな肌感覚に訴えてくるものであって欲しいの。私はいつも言ってるのよ、映画のトレイラー(予告編)みたいに感じられなければ、その曲は完成じゃないって」と彼女は言う。その意味から言えば、「EPのタイトルを“Room 93”にしたのは、ホテルってところが凄く奇妙な親密感に支配されてる場所だからなの。 自分の身分を偽っても構わないっていう究極の小宇宙でしょ」。この言葉を裏付けるように、EPの曲を彩るのは様々な逢引の物語だ。

「私は他の人たちが、ともすればあまり話したがらないことに対しても、凄くオープンに口にしちゃうの、」アシュリーは言う。「何故って自分の音楽は常に、本当に純粋で率直で、正直なものであって欲しいから。曲の書き方にも内容にも、こうでなきゃならないなんて縛りはないしね」。彼女の曲の題材は殆どは、頑固なまでに実生活に基づいている――場所も、固有名詞も、会話までもがほぼそのまま再現されていると言う。

ブルックリンを舞台にした夢遊病的な’Hurricane’では、一晩限りの関係を持った薬物中毒の浮気相手が、彼女の元からふらりと去って行く様子を、どこか現実味なく歌っている。「あの曲には凄く微妙なフェミニズムが込められているの」、彼女は言う。「♪I belong to no city. I belong to no man(私はどこの街にも属さないし、どの男の所有物でもない)♪ってね。昔ながらの考え方で言えばネガティヴな捉え方になる一晩限りの関係に、ポジティヴなひねりを加えてみたのよ」。対照的に、ピアノとヴォーカルだけの ‘Trouble’ は、「私に劣等感を与えることに病的でサディスティックな歓びを感じる」男についての歌だ。EPの収録曲は全篇感情に衝き動かされてはいるものの、ここにひとつ共通項が見出せる:主人公たちは、決していつまでも犠牲者の立場に甘んじることはないのだ。

音楽の世界でも実生活でも、アシュリーは絶えず自分自身の権限の拡大を図っている。以前、某有名音楽番組のオーディションを受けた際、プロデューサーたちは彼女の独特のかすれと粗い質感のある歌声に無遠慮にケチをつけた。「『ああ、キミの声じゃポップ・ソングは歌えないね。キミみたいなクセのある声は、ある特定のタイプのオーディエンスにしかアピールしない。そういう人にはこの番組は向かないんだよ。悪いけど』って言われたのよ」、彼女は言う。ところがそれから数か月後、’Ghost’を聴いた番組プロデューサーのひとりが、一緒に仕事をしないかと申し入れて来た;「『キミこそスターだと思ったよ』だって。私にとってはまさに、名誉回復の瞬間だったわ」。

彼女はその申し入れに対して殊の外威勢よく、けれど心からの気持ちを伝えた;「いいえ、結構です。スイマセンけど」。既にお察しのように、アシュリーをヘコませるのは容易ではないのだ。

ホールジーのキャリアはまだ始まったばかりである。

2015年1月記