BIOGRAPHY

GABRIELLE / ガブリエル


gabrielle「スターたちが、ブリット・アワードを受賞するために、ステージに上がっていくのを よくテレビで見てたわ。その当時は、自分が後々2つも受賞するなんて、夢にも思わな かった。私は一発屋だって思われてたし。もちろん、時にはひとりのスターが何百万枚もレコードを売っても受賞できない時があるけど、それって不公平よね。彼らは間違 ってるわ。でも言わせてもらえば、私に2つもブリッツをくれたんだから、彼らは絶対 正解よ!」

 これが典型的ガブリエルだ。一方ではパンチのように誇り高く、また一方では、それ が本当に起きたことなのか必死に信じようとしているのだ。”一発屋だって?”放っ ておこう。1993年、”ドリームス”が登場して以来、彼女は常にチャートに存在し 、ラジオからも消えることがなかった。彼女の最初の2枚のアルバムはびっくりするよ うな、6つのポップ・トップ・テン・ヒットを生み出している。これらの2つのブリッ ツの他にも、彼女は映画”ブリジット・ジョーンズの日記”のサウンドトラックで 大ヒット曲を提供し、2つのMOBOとアメリカン・ミュージック・アワードを受賞し ている。ヨーロッパ中のツアーもすべて売り切れ状態だ。また、彼女はネルソン ・マンデラ氏にも会い、歌を披露している。

 そうした中、彼女は個性的で、誰にでも愛される独自のスタイルを開発している。会話 の仕方、時にはお姉さん風に、時にはセクシーに、時には悲しげに、リスナーは彼女の 思考の中に引き込まれていくのだ。自分が歌う曲のほとんどを作曲、または共作してい る彼女の才能の一面は、彼女を現代のポップ・ヴォーカル・”プレゼンターたち”から かけ離れた存在にしているだけでなく、彼女が聞き手に語りかけているものは、本物だとい うことを教えているのだ。

「無理やり手にしたものの上に乗っかってるような気分になることもあるわ。そしてあ る日、みんな、そんなものは消えてしまうって気づくのよね。」と、冗談まじりに彼女 は言う。「決して気づく日がこなければいいなって思ってるけど。私もそういう振りを するのがうまくなってるのよ。」

“ドリームス・キャン・カム・トゥル-~グレイテスト・ヒッツ Vol.1″では、自分で判断を下してほしい。 当然、このすばらしいポップ・スマッシュ・ヒット・コレクションは、ハックニー出身の 一回きりのパート・タイム・クラブ・シンガーをスターにした作品も含まれている。 決して忘れることのできない、今でも中毒になる”ドリームス”だ。そして”ライズ”では、 とても公的かつ悲劇的出来事の後の我々のヒロインの心の葛藤を描いている (唯一、ボブ・ディランによって、はっきりそのシンプルな個性を打ち出した曲!)。 “サンシャイン”は、彼女の息子と母親への讃歌的トリビュートであり、転がるような”ホエン・ア・ウーマン”のテルマ&ルイーズ的楽しさ、バカラック/デ イヴィスの”ウォーク・オン・バイ”のかっこいいカヴァーや、や はりかなりバカラック風の、彼女の作品、”ギヴ・ミー・ア・リトル・モア・タイム”。また、フランスのテレビ番組での出会いから、イースト17とチームを 組んだ”イフ・ユー・エヴァー”、前述の”ブリジット・ジョーンズの日記”のテーマ曲、”アウト・オブ・リーチ”などもりだくさんだ。

 また、このアルバムにはガブリエルの2つの新しいヒット曲も収録されている。彼女の作曲で、プロデューサー、ジョナサン・ショーテンを迎え、”アウト・ オブ・リーチ”と同時期に録音された”スマイル”は、彼女の最新シングルだ。ソウルフルで激しいバラード、”イフ・アイ・ウォークト・アウェイ”も、数ヵ 月後に続いて発表される。

「成長したのよ。」最高のポップ/ソウル・シンガー・ソングライターのひとりとして、ガブリエルは彼女の発展させてきたスタイルを説明しようとしてくれ た。「私はポップが大好きな子供だったわ。マイケル・ジャクソンの”オフ・ザ・ウォール”、アダム&ジ・アンツ、ワム!、チャカ・カーン...それからマ マのレコード・コレクションをあさって、マーヴィン・ゲイを発見したの。バリー・ホワイトやボビー・ウーマック、デニス・ブラウンとかね。最近はデヴィッ ド・グレイとイヴをしょっちゅう聞いてるわ。すべてが私の中に入ってきて、私自身としてまた外に出てくるのよ。」

 トレィシー・チャップマンの”ファスト・カー”のサンプルをもとに作られた”ドリームス”のデモ・ヴァージョンを初めて聞いた時、ロンドンのアンダーグ ラウンド・R&B/ソウル・シーンはざわめいたものだ。すぐにゴー・ビート・レコードが彼女と契約し、サンプル部分なしにこの曲をリリースしている。女性 アーティストとしては最高位でチャートに入り、3週間ナンバー・ワンに留まったことで、ガブリエルはギネス・ブック・オブ・ヒット・シングルスに登場して いる。キス・カールにアイ・パッチをしたこの若い女性シンガーは、スクリーンや雑誌でもすぐに人気者となっていった。

 当時を振り返って、彼女は冗談を言う。「アイ・パッチが好きなのって、私だけだと思うわ!それにジョセフィン・ベイカーの髪型とか、ステキよね。私のマ マはあの髪型が大嫌いなの!でも、すごく力強い感じがするの。男のひとたちはピリピリしながら、私を見てたわ。いったいどうすればいいのか、わからないっ て感じで。何回か、有利な立場に立つために利用したけどね。」

 2枚目のアルバムからのシングル、”ギヴ・ミー・ア・リトル・モア・タイム”が出たころには、保守的なソウルと現代のブリティッシュ・ポップがブレンド された古典的ガブリエル・スタイルは成熟期を迎えていた。それは自然に3枚目のアルバム”ライズ”につながり、今のところ彼女の最大ヒットになっている。 マドンナやシェールがディスコに向かっている時、このアルバムは、メロディックでミッドテンポなストーリー・ソングに向かっていた。”ライズ”は現在でも 驚くほど、世界中でよく売れている。

 こうした栄冠にどっしり休むことなく、ガブリエルは常に熱心に作曲活動を続け、4枚目のアルバム製作に取りかかっている。”プレイ・トゥ・ウィン”は来 年の春頃リリース予定だ。その一方で、彼女はこのグレーテスト・ヒットに収録されたすばらしい14曲を数えてみたりするのだ。 「最近、私が書いた曲って、そんなに悲しいものじゃないわよね。」ニヤッと笑って、彼女はしめくくった。 彼女の歌が物語っているように、夢は実現するものなのだ。
和訳:秋山静子


イースト・ロンドン出身。デビュー曲「ドリームス」はギネス・ブック上の記録として”女性新人アーティストとして最も高いエントリー”とされ、UKチャー ト3週連続1位を記録し、GO! Beatより世界へ羽ばたいた、UKソウルを代表する楽曲となった。このヒットの経過はトレイシー・チャップマンのヒット曲「ファスト・カー」からのサン プリングを使用した「ドリームス」のデモがロンドンのアンダー・グラウンドのシーンで盛り上がり、あれよあれよという間に大ヒットとなったという奇跡のよ うなストーリーがある。アイ・パッチの女性ソウル・シンガーとしてそのルックス、歌声の個性でイギリスはもちろん、アメリカでも頭角をあらわしていった。 2度のブリッツ・アワードでの受賞。アメリカン・ミュージック・アワードでも1度受賞。そしてMOBOアワードを数回獲得している。続くセカンド゙・アル バムを合わせて、イギリスでのTOP10ヒット・シングルは6曲。楽曲の質はクラブ受け中心だったものから、徐徐にバカラック調のものへと移行。そして 3rdアルバムではその彼女らしさを十二分に発揮したミッドテンポ中心のアルバムを作り、セカンド・シングルでアルバム・タイトルでもある「ライズ」はイ ギリスでラジオ、セールスともども大ヒットを記録し、アルバムの売上を一気に加速させ伝説的存在となる。アルバム発売7週目で1位という超まれな現象を奇 跡的に起こした。いまやディーバとして君臨。そんなガブリエルが今年の大ヒット映画となる「ブリジット・ジョーンズの日記」に1曲書き下ろした。30代独 身で頑張るOLの姿をコミカルに描いたこの原作に共感した彼女がまたもやヒット曲を生んだ。日本にも’96年にプロモ来日をし、セカンド・アルバム『リ トル・モア・タイム』からのシングル同タイトル曲はラジオでもヒットした。また「ライズ」は日本のクラブでも大いに受け入れられ、クラブ・チャート3 位、年間の上半期チャートでも6位とDJの間でも大好評。