BIOGRAPHY

Emerson String Quartet エマーソン弦楽四重奏団


エマーソン弦楽四重奏団は、アメリカが建国200年を祝った記念すべき年である1976年に、フィリップ・セッツァーとユージン・ドラッガーというジュリアード音楽院に学ぶふたりのヴァイオリニストが、同窓生の他ふたりと一緒に結成した弦楽四重奏団である。


エマーソン弦楽四重奏団というこの演奏団体の名称は、アメリカの偉大な哲学者であるラルフ・ウォールド・エマーソンの名前に由来するものである。

セッツァーとドラッカーは、ともにオスカー・シュムスキーに師事したヴァイオリニストであり、ロバート・マンらに師事している。一方、結成当時のヴァイオリニストとチェリストは、間もなく退団することとなり、この演奏団体がちょうどプロとしての本格的な活動を開始した時期に、ヴァイオリニストのローレンス・ダットンが加入し、続いて1979年にチェリストのデイヴィット・フィンケルが加入したのであった。この弦楽四重奏団の最も注目すべき特徴は、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンのメンバーを固定してしまわずに、ふたりのヴァイオリニストが時と場合によってそれぞれのポジションを交代して分担する、という独自の方法を採用している点にある。そして、こうした民主的な対処は、同時にふたりのヴァイオリニストの力量の高さの証明でもあり、それは、この弦楽四重奏団のひとつの証拠といえるものであろう。

エマーソン弦楽四重奏団の結成後すぐにときめきと頭角を現し、2年後の1978年にはナハトマジーク室内楽賞を受賞した。そして、1980年にワシントンD.Cスミソニアン・インスティテートのイジデント・クワルテットになった彼らは、その2年後にはニューヨークのリンカーン・センター室内楽協会の第1レジデント・クワルテットにも迎えられ、それ以後は、ハートフォード大学のハート音楽学校で教授活動と演奏活動を行うレジデントになり、1983年にはアスペン音楽祭のレジデント・クワルテットとしても活動するようになった。1985年に初めてヨーロッパに演奏旅行を行なってセンセーショナルな成功を収めた彼らは、間もなく現代を代表する弦楽四重奏団のひとつとして数えられるようになったが、高度な演奏技術とシャープなモダンな感覚を兼備」した彼らはそれによって伝統と矛盾することのない新鮮でみずみずしい演奏様式を打ち出している。