BIOGRAPHY

DEUCE / デュース


Deuce アーティストは、成長するか、さもなくは死ぬか。2年前、元ハリウッド・アンデッドのフロントマン、デュースにとって、昔のバンドでの生活は、何もかもがゾンビと化したようになっていた。彼の脱退がもたらしたショックと同じぐらい劇的だが、彼がソロ・アーティストになるということは、創造力が蘇ったシンガー/ラッパー/プロデューサーの復活に他ならない。

 Five Seven Music から出る初のフル・レングス・デビュー作『ナイン・ライヴス』を武器に、デュースは、抑制が外され、運命が彼一人のものになった時、彼に何ができるのかを世界に見せようとしている。会議で創造に関しての決断をするのではなく、デュースは初めて、全く後先考えずに行動する贅沢を手にした。彼はこの機会を一秒たりとも無駄にはしない。

「ソロ・アーティストであることで気に入っているのは、もっと色々捻って、より大きな効果を生めることだね。よりハードに打てる」と、デュースは言う。

「『皆にこう思われる』、とか『俺はそれやれない』とか心配する大勢の人間達がいないからね。より深く突っ込む自由があるんだ。もっと選り好みするようになったけど、でも前より楽しいと感じてるし、制限がないからさ。言えることが腐るほどあるんだよ、メロディ的にも音楽的にも沢山のやり方でね」

 デュース(a.k.a  アーロン・アーリックマン)は、ラップ・ロック・グループのハリウッド・アンデッドを、2005年に”J-Dog”(ジョレル・デッカー)と共に結成した。他のメンバー達がその後で加わり、このグループはフル・レングスのデビュー作『スワン・ソングス』を2008年にA&M/Octone Recordsから発表。瞬く間にヒットとなったこのアルバムは、今やプラチナムに手が届きそうだ。2009年6月、ハリウッド・アンデッドは『スワン・ソングス B-Sides EP』をiTunesで発表、そして11月には、これまでの未発表曲6曲とライヴ音源6曲と、リミックスを一曲収録したCDとフル・ライヴを収録したDVDが一体となったCD/DVD『デスパレート・メジャーズ』をファンに届けた。2009年の12月、ハリウッド・アンデッドはロック・オン・リクエスト・アウォーズで、”ベスト・クランク/ロック・ラップ・アーティスト”を受賞した。しかしバンド内では、問題が起ころうとしていたのだった。

  2010年の早い時期に、ハリウッド・アンデッドとデュースは決別した。フロントマンとシンガーに集中して活動を続ける決意をして、デュースはハリウッドにある彼のSickle & Hammer スタジオで、新しい曲を作り続けた。その結果が、彼のソロ・デビュー・アルバム『ナイン・ライヴス』だ。サンセット・ストリップで道楽に陥っている時を除けば、主導権を握った男の宣言書のような作品だ。デュースは『スワン・ソングス』というアルバムにとって不可欠な存在だったため、彼は『ナイン・ライヴス』を彼の2作目として考えている。そしてファースト・アルバムのファンは、一作目と比べて、新作の連続性と進化を間違いなく堪能するだろう。

 「両方とも同じ方法、同じ場所で、同じ人間によって作られた。だからこのアルバムの曲をプレイして、『スワン・ソングス』からの曲をプレイしたら、誰もが『同じ人間の、同じ作品みたいだ』って言うだろう」と、デュースは言う。

「このアルバムは同じサウンドと特質を持ってる。でもより新しくなってるし、よりビッグな曲もある。確かに、俺のセカンド・レコードだって言えるよ」

  パーティのヴァイブは、明らかにそういう調子のオープニング曲”レッツ・ゲット・クラッキン”で、最初から高速ギアで始まる。親密な行為の赤面しそうな話を中心に、最高に生々しいアーリックマンを表している曲だ。

「この歌詞は過激すぎて、ここに曲を聞きに来る女の子達には、大抵見せるのが恥ずかしくてさ。実際に、音を消した時もある」と、彼は認める。

「でも、それが俺が本当に誇りに思っている曲なんだ。例えば、『女のクリト○スをこすってる』ってのがいいと思ったら、それをキープする。俺は他人が何を言おうと気にしない。その卑猥な歌詞がいいと思ったら、『そいつキープな。必要だったらピー音で消せばいい』って言うよ」

  2曲目では、卑猥の種類が変わる。”ヘルプ・ミー”はデュースがハリウッド・アンデッドを脱退した後の業界とレーベルでのドラマについて語っている。この曲は面白く不遜で、中傷する人間に独自のユーモアと鋭い機知に富んだ歌詞で答える頑固なヴォーカリストの姿を捕らえている。

「訴訟の最中にあの曲を書いたんだ。レーベルとバンドに、俺をコントロールすることはできないって知らせたかった。ただ批判してるだけだけど、すごく笑えるんだよ」と、デュースは説明する。

「俺にとって、これは業界の人間を怒らせることについての曲だ。俺が言ってるのは、『ランディ・ジャクソン、俺の黒いケツにキスしな』とか、そういうことなんだよ。俺には『クソクラエ』的なアティテュードを持った支持者達が大勢いるからさ」

 『ナイン・ライヴス』の否定できない力の一つは、同じ音の空間で、ラップからオルタナティヴ・ロックからほぼメタルまで、継ぎ目なく行き来するその多様性だ。最近のアーリックマンの、よりダークな失望した瞬間が、アルバムの後半で声を上げる。”ノーバディ・ライク・ミー”の突然の叫びは、戦闘的な自決のような”ウォーク・アローン”へと流れる。これらの曲は『ナイン・ライヴス』の軽めの曲に対抗するものを、マイクを握る男に宿る悪魔を匂わせつつ提供してくれる。

「”ノーバディ・ライク・ミー”は、昔のバンドと別れる時に作られた曲なんだ。俺は失望感を感じてて、でも遂に一人になって力がついた気もしてた。そこからこの歌詞が生まれたんだ……それから、”ウォーク・アローン”は、ただ俺がやばいことを語っているだけで、基本的に、人をぶっつぶそうとしているだけだよ」

  こういう正直さと真っすぐな感情が『ナイン・ライヴス』をこのクラスのトップに押し進めるだろう。これは言うべきことがあり、それを遂に言えるようになった創造の自由を手にしたアーティストの作品だ。『ナイン・ライヴス』は個人的な経験を基に書かれたアルバムで、最近のデュースの経験といえば、女の子達とMCバトルだった。間違ったメッセージもないし、手加減されたパンチもない。今作は抑制も検閲もされない、ありのままのデュースだ。

「それが誰かへの直接打撃であれ、パーティ・ソングであれ、俺が言ってることを理解するのに何度も繰り返し聞く必要はないね。奇妙だけど、それが俺の人生なんだ。敵がいて、セクシーな女達がいて……ゲームなんだよ。よりいいサウンドで、よりいいルックスの奴が、より多くの観客を呼べるんだ」と、彼は言う。

「『ナイン・ライヴス』を振り返ると、自分がソングライターとして、プロデューサーとして、それからシンガーとして、進歩したと思う。『スワン・ソングス』を聞いて、これを聞いたら、誰もが『うわ、これにはネクスト・レベルのやつが入ってる』って言うと思うよ」