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村治佳織レコーディング・レポート 2011
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■村治佳織レコーディング・レポート 2011
◆村治佳織 プレリュード レコーディング・レポート

ギターレパートリーの開拓を目標のひとつにした、ソロ・シリーズも今回で3作目。
ひとつの区切りを迎えたことになります。そのような思いもこめて、ポートレイツ(UCCD-1250)をレコーディングしたロンドンから車で3時間くらいのところにある、おなじみのポットンホールをレコーディング会場として選択しました。7月9日にマドリッドからロンドン入りした村治さんと私は、翌日10日にデッカが用意してくれた迎えの車に乗り込み、イギリスの美しいカントリー・サイドを目指しました。車の中で、村治さんがマドリッドで練習として弾いた簡易録音を聴きながら、レコーディングの打ち合わせをしていたら、ドライーバーが、“おっ、その曲知ってるよ、なんと言う映画だったっけなー、”と話しかけてきました。“ベニスに死す”だよと、私はニヤリとしながら答えました。狙いが当たった、一般の人でも、知ってるんだと思ったからです。(マーラー:アダージェット)

7月11日からレコーディングを開始。エンジニアだけが、新しいメンバーでジョナサン・ストークスという、元デッカのエンジニアで現在はクラシック・サウンドという録音集団を形成している大ベテラン。日本では小澤征二氏のサイトウ・キネンのレコーディング・エンジニアとしても、知られています。今年は世界のどこもが気象異常で、とにかく涼しいを通り過ぎて、寒かったのです。外は晴れていても、ホールの中は、寒く、2日目にはストーブを持ち込み、つけてみましたが、気休め程度にしかなりませんでした。

今回の目玉のひとつは、世界の坂本龍一氏が村治のために書き下ろしてくれた、“プレリュード”と、氏が音楽監督として臨んだ映画“一命”の中の挿入曲“スモール・ハピネス”という坂本氏の新作です。“プレリュード”に関しては、奏法上とても難しく(というか、今までにない音の重なりでマドリッドで練習を続けていた村治さんから“生まれて初めて、練習のし過ぎが、左指に水ぶくれが出来ました。”とメールが届くほどで、大変だったようですが、レコーディングでは、左指もさらにカチカチになり、見事に弾きこなしていました。もう1曲の“スモール・ハピネス”は、坂本さんから直接参加をたのまれたもので、氏が音楽を担当した映画“一命”の挿入曲で、映画用のレコーディングが行われたのは、2011年3月11日でした。都内レコーディングスタジオで、16時からの予定でセットされていたのですが、あの大震災の発生で村治さんは、1時間半遅れて到着。エレベーターも止まり、楽器を抱えスタジオへ階段を駆け上がりました。そうしたらまた余震。レコーディング中も繰り返し襲ってくる余震におびえながら、それでも毅然と臨み、19時頃、無事終了。なんとも記憶に残るレコーディングとなりました。
ポットン・ホールでのアルバム用のこの作品のレコーディングの時は、この時の記憶が甦り、ひとしきり震災の話題が続き、イギリスのレコーディング・スタッフからも、丁重なお悔やみの言葉をいただきました。

レコーディングも順調に進み、予定されたスケジュール内で終了。今回は例年と違って、最終日にプロモーション・ビデオの撮影はなく、(今回初めて東京で撮影しました。)機材撤収とその日のうちに、ロンドンに帰らなければいけない、ジョナサンを残し、打ち上げディナーと恒例のウイスキー・パーティー。村治さんは、お酒 強いです。

色々な思いが詰まったアルバム プレリュード ぜひお聴き下さい。

2011年7月 英国 ロンドン にて。
篠原良(ユニバーサルミュージック プロデューサー)
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