パート1.ニュー・アルバム『プレゼント・フォー・エヴリワン』について(1)

=セカンド・アルバム・が完成しましたが、まず感想を?
3人:とっても満足してる。
Matt:今回のアルバムは1枚目よりもずっと細部まで気を配って作ったアルバムなんだ。深くつきつめたアルバムというか。意識の上で・・・・・。
Charlie:幸福な状態にあるというか。
James:そう。セカンド・アルバムを完成させるという責任は、僕らにとって確かにかなりの重荷だった。
M:最初の1年でアルバムを2枚出す、ってクレイジーだよね。
J:そう1年で2枚って凄いと思う。かなりの仕事量だよね。

=確かに。5月にやったツアー中に曲を書いたわけでしょう?ホテルの部屋で。
J:ツアー中、だいたいステージが終わるのが10時頃。ホテルへ帰って、夜通し曲を書いて、明け方ベッドに入る、っていう生活だった。ホテルで1, 2時間寝て、それからバスに乗って、バスで午後3時頃まで寝て。それからサウンド・チェックして、ステージ、っていうスケジュールだった。バジャー(夜行性の動物)みたいだったね、僕ら。

=ツアー中に曲を書くバンドというのは珍しくありませんが、まあせいぜいアルバム中1, 2曲といったところでしょうか。ところがあなた達の場合・・・、ツアー中に何曲書いたんですか?
J:ほとんど全部。
C:そうだね、大体ほとんどって言えるかな。

=アルバムには全部で何曲入っているんですか?
C:15曲、前のアルバムが14曲だから、一段アップしたというか。最高の曲が全部で15曲。

=実際に書いたのは?
M:15曲。

=すると捨てた曲は全くない?
J:全部使った。曲を捨てるような時間、僕らにはないんだよ。大急ぎで作ったから。


=スランプはなかったの?
J:なかった。
M:まったく。そういうことはなかった。かなり簡単だったな。曲を書くのは。しばらく書いてなかったから。
C:その点よかったね。

=セカンド・アルバムを作るにあたって、1枚目とどんなところを変えたかった?
M:ライヴ・ドラムを入れたかった。絶対に。1枚目のときのプログラミングされたドラムは好きじゃないから。
C:それが絶対条件だった。
J:それからギターをラウドにいれたいと思った。もっとギターを押し出したサウンドにしたかった。
M:キーボードを減らして、もっとバンドがレコーディングしたようなサウンドにしたかった。プロデューサーがやったというより、バンドが録音したんだ、という音にしたかった。
C:ライヴの要素が強いアルバムにしたかった。
J:ツアーをやったとき、実際にライヴで曲を演奏してみたら、アルバムよりもずっとロックぽかった。ギターがずっとラウドで。そのサウンドというのが、まさにセカンド・アルバムのサウンドなんだよ。

=新作の歌詞は1枚目以上に強力なわけですか?
C:そうだね。強力な点だ。

=歌詞はフィクションですか、それとも個人の実体験に基づいていますか?
C:いくつかの真実、いくつかは自分の体験以外のところから引き出してきた。映画のように。
J:奇妙なことに、実際の経験に基づいて書いた歌詞はともかくとして、体験以外のところから引き出して書いた歌詞が、なぜか実際の未来になるような気がしてならないんだ。書き終わった後で経験になる、というのかな。納得できちゃうな。

=じゃあ「クラッシュト・ザ・ウェディング」は未来に起こるようなこと?
C:ノー!
M:絶対に起こって欲しくない。望むところ。

=1枚目のアルバムを作ったときは自分たちで殆どをやったわけですよね。プロデューサーとはやらなかった?
C:そうじゃなくて、今回のアルバムは僕らの意見が通ったアルバムなんだ。このアルバムは僕らなんだ。僕らがプロデューサーにどうしたいか、指示をくだした。前のアルバムは自分たちのやりたいことをやるには、プロデューサーと討論しなければならなかった。
J:前のアルバムは坂を登るような格闘だったんだ。それに比べると今回はずっと簡単だった。プロデューサーはプロデュースするだけで、僕らのつま先を踏むようなことはしなかった。


パート2.ニュー・アルバム『プレゼント・フォー・エヴリワン』について(2)

=今回2人のプロデューサーとやっていますね。まず、スティーヴ・パワーですが、彼を起用するというのはあなた方の意見?それとも誰かに推薦されたの?
M:人に推薦されたんだけど、彼が何者なのか発見して、すごい人だと気がついたんだ。
J:彼がこれまで手かげたレコードはかなりの数大ヒットになっている。大ヒットを出したからというだけの理由で選んだんじゃないけど。彼の音作りが好きだったし。
M:彼「スペースマン!」って曲やったんだ。
C:あとバッグ・オブ・フィードの初めてのヒットをプロデュースしたんだ。「トゥー・ハイ」っていう。

=殆どの曲はスティーヴ・パワーが手がけたんですよね。「3am」と「シー・ウォンツ・トゥ・ビー・ミー」という2曲以外は。
M:2曲はマトリックスとやった。
C:マトリックスとLAで録音したんだ。アメイジングな体験だった。アヴリル・ラヴィーン、デヴィット・ボウイも手がけたことのあるプロデューサー。
J:そうだね、彼らはかなりビッグなレコードを作った。

=マトリックスはあなた方がやりたいと希望したプロデューサーですよね。
C:そう。一緒にやりたくて希望した。それで一緒にやることになった。

=LAに行ったそうですね。9月に2週間ほど。LAのレコーディングはどうでしたか?
M:LAはとにかくクールなところだった。
J:ジャクソン5がレコーディングしたというパラマウント・スタジオに入ったんだ。本物のクラシック・バンドがレコーディングしたようなところ。
C:ビートルズとかね。アメイジングなところだったよ。

=マトリックスと共作したそうですが、曲作りの過程はどんなでしたか?
J:曲作りの過程は・・・・・、彼らが出した曲のアイデアを持ってスタジオに入り、マトリックスと僕ら一緒に完成させたんだ。
C:この2曲はマトリックスがアイデアを出したけれど、他の曲全ては僕らが書いた。曲のアイデアを出してから完成させるまでほとんど僕らがやった。
J:マトリックスが提供するのはパッケージみたいなもので、彼らは曲作りとプロダクションを両方手がけるチームなんだ。単なるプロデューサーなんじゃなくて、曲を書き作り上げるんだ。だからもし彼らと一緒にやりたいとなると共作というのが条件なんだ。
M:正直なところ、マトリックスとやってよかったと思ってるんだ。とってもいい曲が仕上がったし。
J:これまで僕らがやった共作のなかで、最高の作品になると思うよ。
C:そうだね。
J:彼ら僕らのスタイルを理解してくれて、僕らも彼らのスタイルをとっても気に入って。だから二つのスタイルの合体だよね。明らかにアルバムの中に入っている曲の中でも、最強の曲のひとつだと思う。

=サウンドはマトリックス・サウンドに仕上がっているの、それともバステッド・サウンドに仕上がっているの?
C:僕らとマトリックスの混合だろうな。
J:そうだね。マトリックス・サウンドのサウンドというのも結構聞き取れる。ギターを入れるにしてもマトリックスの一人スコットと一緒にパートを書いたりしたしね。共作とはいえ、マトリックスのサウンドは否定できないね。なにしろ彼らがプロデュースしたんだから。


パート3.シングル曲「クラッシュト・ザ・ウェディング」について

C:「クラッシュト・ザ・ウェディング」は次のシングルなんだ。ビデオの制作はとっても楽しかった。ビデオのせいで、曲が一段とよく聞こえるよね。
M:そうだね。

=今朝、そのビデオを見せてもらいました。一人で何役もこなしてますね。作るのが楽しかったでしょうね。
M:そうだね。これまで作ったビデオの中で一番楽しかった。最高に楽しかった。
J:でもメイクによっては、痛みを伴ったよ。ラテックスを顔に張ったんだけれど、はがすのが凄く痛くてさ。ぴったり顔にくっついちゃって。いつまでもはがれない部分が、ベッドで寝ていると首のあたりについてるのに気がついたりしてさ。
M:鬘をかぶったんだけど、そのときの糊が首の後ろに残ったりしたんだ。
C:顔の脇とかさ。

=一人で何役やったんですか?
C:4役づつやった。
M:そうだね4役づつ。

=オープニングでジェイムスはマイケル・ジャクソン、マットは・・・・・・
M:アダム・アント。

=チャーリーはボーイ・ジョージ!!
C:そう。ボーイ・ジョージは日本で人気があるの?

=昔はね。
C:ボーイ・ジョージだぜ。ボーイ・ジョージ!ちょっとした人物だよね。
M:ルックスがいい。
C:あれは監督のアイデアなんだけどね、実のところ。楽しかったな。
J:実は僕、マイケル・ジャクソンにはなりたくなかった。
M:僕は昔から花嫁が好きだった。
J:これまでのビデオでもムーン・ウォークしたから、このへんで、マイケル・ジャクソンには休みをあげたいと思うんだよ。でも今回のビデオはとってもアイデアがよかったんで、最後のチャンスということでマイケルをやったんだ。


パート4.シングル「クラッシュト・ザ・ウェディング」収録曲について

 

=「クラッシュト・ザ・ウェディング」のシングルのB面では、カヴァー・ヴァージョンをやっていますね。
M:何度かカヴァーをやった。B面でね。
J:B面はカヴァーをやるいい機会だからね。
M:マクフライと一緒にカヴァーをやった。
J:それからクリスマス・ソングで「あめにはさかえ」。チャーリーの歌声がいいよね。
M:そう。チャーリーの歌声が美しいんだ。
C:とってもクリスマスっぽいヴァイブに溢れていて。
M:そう。涙ぐみたくなるような。

=「ビルド・ミー・アップ・バターカップ」なんて60年代の古い曲ですよね。どうやってみつけだしたのですか?
C:でも、伝説的な曲だよ。
J:映画の「メリーに首ったけ」に出て来るんだよ。
M:ビデオ見た?とっても可笑しい。グレイト、あの曲大好きだ。
J:B面をやるのは、そういった曲を蘇らせるのが目的なんだよ。アルバムにはカヴァーは入れたくないんだ。アルバムはオリジナル曲だけを入れるべきだと思ってるから。でもB面の場合はカヴァーをやるいい機会なんだよ。

=ジャムの「ザッツ・エンターテインメント」もやってますよね。
M:そう。それもまた伝説的な1曲だよね。あとここで付け加えておきたいのは、その曲はワンテイクでとったんだ。

=こういったカヴァーをやることで、新曲のアイデアもわいてくるかもしれませんからね。
J:多分ね。
M:まあそれもありえるかもね。


パート5.ニュー・アルバム『プレゼント・フォー・エヴリワン』について(3)

=このアルバムのタイトルは『プレゼント・フォー・エヴリワン』って言うんですよね。
M:そう『プレゼント・フォー・エヴリワン』。
C:クリスマスにぴったりのタイトルだね。皆への贈り物なんだよ。わかるかな。
M:ウールワース(イギリスのスーパーマーケット・チェーン)へ行って、プレゼント何を買おうかな・・・と思う。すると『プレゼント・フォー・エヴリワン』が並んでいる!
J:おかしいタイトルだよね。
C:シリアスじゃないんだよ。本気で皆へのプレゼントって思っているわけじゃない。

=ソフトでジェントルなタイトルですよね。
C:そうだね。

=もっとハードなパンチのあるタイトルは考えなかったの?
M:そういうのもひとつふたつあったけど。バットマンキーとかさ。
C:コックローチ。
M:コックローチ!だって(笑い)バットマンキー。バステッド!バットマンキー!!

=今年5月にツアーをやりましたよね。ライヴ体験が今回のアルバムの曲の書き方を変えましたか?
C:あんまり。このアルバムはバステッドだし、他の何か違った方向に向かっているわけででもないし、今までのバステッドと同じなんだよ。ただ少々プロダクションが違うだけで。ギターがもう少し多く入っていて。
J:あと聞いた人に僕らはボーイ・バンドじゃないんだってわかってもらえるアルバムだと思うんだ。本当にそう思っている。僕らにはロック・ギター・エッジがあるってことわかってもらえると思うんだ。ずっとロックしているアルバムだと思うから。

=自分達のどんな面が一番成長したと思いますか?演奏とか、ソングライティング、歌とか・・・。
M:ヴォーカルが一番成長したと思うな。ずっと。ギグをたくさんやったから。疲れていても歌わなきゃいけないということに慣れたし。
J:歌えば歌うほど上手くなるよね。
M:そうだよね。3人ともヴォーカルの力がついたと思う。前のアルバムよりずっとよくなったと思う。
J:ミュージシャンとして全般的に、上手くなったと思う。ツアーをやったから。毎晩演奏するんだもの、上達するよね。

=アルバムの曲はマクフライ(McFly)というバンドのメンバー、トム・フレッチャーと一緒に書いたそうですが。
J:そうなんだ。

=そのいきさつは?
J:トムは、かなり前からの知り合いなんだ。
M:僕と同じ学校に通っていた。
J:僕とマットがNMEにメンバー募集の広告を出したとき、チャーリーが応募 してきたときだけど、トムも応募してきたんだ。トムはバステッドに参加するという話もあったんだけど、結局自分のバンドをやりたい、ということになった。 それでトムは曲を書くようになってそれがマクフライになったわけさ。

=バステッドと同じレーベルと契約したんですよね。
J:そうなんだ。

=バステッドの弟バンドみたいな感じですか?
J:うーん、でも、
C:ジュニア・バステッドっていうんじゃなくて・・。
J:まったく別のバンドだよ。ただ僕らととっても気が合う。
M:いいバンドだよね。
J:アメイジングだよね。自分達のスタイルを持っている。それはとっても大切 なことだと思うけど。だって僕は、バステッドみたいな似たりよったりのバンドだったら一緒にやりたいと思わないもの。面白くないっていうか。トムやマクフ ライと一緒に曲を書くのは楽しい。違ったタイプの音楽を書く機会だから。マクフライとやることで、まったく違った分野を体験できるんだ。クール!

=マットとトムは知り合いだったのに、なぜトムはオーディションをうけたの?
M:同じ学校に通っていたけれど、友達つきあいはなかったんだ。

=セカンド・アルバムで、トムと一緒に何曲書いたのですか?
C:5曲かな。
J:トムはバステッドのツアーに同行したんだ。ツアーがどんなものか体験したくて。ステージが終わったあとで、ホテルの部屋に遊びに来たりしたから、一緒に曲を書くことになったんだ。
C:トムと一緒に曲を書くのは簡単だったね。
J:トムみたいに若い人と一緒に書くのは、いいことだよね。年上のプロデューサーと一緒に曲を書くって難しいし。同じ波長の人ってあまりいないんだ。トムは僕らと同じような年で、似たようなバンドが好きで。お互い理解しあえるんだよ。だから一緒に曲を書くのも簡単だ


パート6(最終回). 来年のUKスタジアム・ツアーへの意気込みと、日本について

=来年はじめにはスタジアム・ツアーを予定していますよね。
J:スタジアムじゃなくてアリーナだけど。そのうちスタジアム・ツアーもやりたいね。

=いくつくらいの日程がきまっているのですか?
C:ウェンブリーは5日間。(*その後追加が出て6日間になった)
M:全部で24日か25日間だと思う。(おしりを動かしながら)ところでこの椅子とっても座り心地が悪いんだ。

=どんなステージにする予定ですか?
M:空中を飛ぶというようなことはやらない。姿を消すこともない。
C:音楽を演奏する。
J:アルバムの曲を演奏する。
M:アルバムの曲を聴きたければライヴに来て!
C:ライヴでラウドで、”チーキー”・ガレスがドラムスをたたく。日本からもぜひ見に来て!チケット買って。イギリスに休暇に来ればいいのにね?

=あなたたちが日本へツアーに行くということは?
C:日本へは行きたい。この前もエージェントと話していたんだ。大きな会場でやれるまで時期を待って。それから来日したい。ロック・イン・ジャパン。

=今年の夏一度来日していますよね。
C:1週間ね。
J:日本は気に入った。
M:でも湿気が凄かったな。
C:そうだね、湿気にはやられたな。暑さには耐えられなかった。もう寒くなったと思うけど。寒いほうが好きだ。
J:日本の人はとってもナイスだった。とってもフレンドリーで。アメリカみたいだよね。皆がとってもナイスで。
C:そうだね。

=一番思い出に残っていることは?
J:握手だな。
M:そうそう。
J:それから皆が拍手するんだ。ファンに会いにいったとき、イギリスだったら皆が悲鳴をあげるけど、日本では拍手で迎えられた。(真似る)
あと日本での思い出といえば、テレビ番組に出たんだけれど「言葉がわかったらな。きっと面白いこと言ってるんだろう」ってつくづく思ったよ。ハロー、グッバイくらいは言えたけど。クレイジーだった。
M:僕のズボンが落ちたんだ。テレビの番組中に。

=放送されたんですか?
M:そう思うよ。
J:日本にもマクドナルドがあってクールだったな。でもちょっと食べ物に困ったな。僕は食生活にたいしてはあまり冒険的じゃないから。
M:僕は冒険的だよ。和食は好きだ。

=探せばなんでもありますけどね。和食全然食べないということも可能だし。
M:でもせっかく日本にいるんだもん、和食を食べるべきだよ。
J:スシが苦手なんだ。
M:僕はスシが好きだ。
C:僕は嫌いだ。
J:新幹線は凄くよかったな。
M:新幹線はクールだった。
C:でも思ったより早くなかった。
J:きっと最高速度の地域に行かなかったんだよ。常に最高速度で走っているわけじゃないよね。
M:マウント・フジを通り過ぎたんだよね。

インタビュアー 高野裕子