<レポート>10/19 赤坂ブリッツ

2017.10.20 TOPICS

2017年10月19日@赤坂ブリッツ

ビリー・ジョエルのスタジアム公演への出演にはじまり、パナソニックのCMソングに新曲が大抜擢、日本の洋楽音楽チャートで1位を獲得など、2017年のアンドリュー・マクマホンの八面六臂の活躍に驚かされた音楽ファンは少なくない。なぜならサムシング・コーポレイト、ジャックス・マネキンという人気バンドで礎を築きながらも、両バンドの活動に終止符を打った彼のその後の活動は、一度メジャーを離れる等、地に足のついたマイペースなものであったからだ。そんななか2017年のアンドリュー・マクマホンによる快進撃は、彼の存在を広く世に知らしめ、結果的に10月17日の大阪BIGCAT、10月19日の赤坂BLITZの二公演を擁したジャパン・ツアーの開催に結実した。

ツアー最終日となる10月19日(木)、平年を大きく下回る12月並みの気温と、それに追い打ちをかけるような冷たい雨がふるなかスケールアップしたアンドリュー・マクマホンの姿に期待するファンが開演前の赤坂BLITZに列を作り、開場と同時に新旧のファンがそれぞれ思い思いに着用するサムシング・コーポレイト、ジャックス・マネキン、アンドリュー・マクマホン・イン・ザ・ウィルダネス(ソロのプロジェクト名)のTシャツで会場はカラフルに彩られた。

暗転のなか定刻から5分遅れの19時05分にバック・バンドのメンバー4人がステージに登場すると、会場からは大きな歓声と拍手が沸き起こった。そのファンの想いに応えるかのように1曲目に演奏されたのは、パナソニックのCMソングへの起用によって、もはやアンドリューの代表曲のひとつとなった「ファイヤー・エスケイプ~きみがいる世界」。軽やかでポップなピアノ・イントロが演奏されると、会場は意表をつかれた選曲に驚きと喜びの声が混じった歓声が生じた。その後、「キャニオン・ムーン」、「ウォーキング・イン・マイ・スリープ」、「ハイ・ダイヴ」、「デッド・マンズ・ダラー」、「アイランド・レイディオ」とソロ活動後に発表された楽曲を披露。世界中のツアーから引っ張りだこ状態ということが頷ける熱いパフォーマンスで徐々に会場の温度が上昇したところで、ドラマーのジェイがタム・ドラムを荒々しく叩き、アンドリューから「僕の髪の毛が黒かった頃、ジャックス・マネキンというバンドをやっていたんだ。ジェイがドラムを叩いたあの曲を演奏するよ」と告げられると、ジャックス・マネキンの代表曲のひとつ「ダーク・ブルー」がスタート。「おかえり!」と言わんばかりの歓声が広がり、この日一度目のピークを迎えた。

「ダーク・ブルー」によって完全にジャックス・マネキン・カラーに染まったなか、アンドリューが選曲したのは最新アルバムのなかでも人気の高い「ドント・スピーク・フォー・ミー」。メロウなキーボードのイントロのなか、巨大なアヒルのゴムボートが登場し、歌い出しと同時にアンドリューがその上に乗ると、ファン一人一人の力によって会場の隅々まで移動しながら熱唱した。その流れのなかソロ一枚目の『アンドリュー・マクマホン・イン・ザ・ウィルダネス』に収録の「マップス」を披露した。ライヴ中盤に差し掛かったところでアンドリューから「日本のファンのみんながツイッターで選んでくれた僕の曲を演奏してもいいかな?普段やることが少なくなってしまった曲をこうやってみんなの前演奏できるのは本当にエキサイティングだよ、ありがとう」と感謝の言葉をファンへ贈り、演奏したのは共にジャックス・マネキン時代の楽曲である「エイミー、アイ」と「アイム・レディ」。アンドリューのピアノ弾き語りで演奏された「アイム・レディ」の深みの増したアレンジに会場は静寂でありながら、アンドリューから発せられる言葉を受け入れたいという雰囲気に包まれた。「もう一曲静かな曲を演奏していいかな?この曲は頑張っている人に贈るために作った曲だ」と言って演奏されたのは「スウィム~あきらめないで」。

ファンへの感謝が込められた楽曲を続けて演奏した後に可愛いシンセ・サウンドとクラップが印象的なドリーミー・ポップ・ソング「シャット・アウト・オブ・ア・キャノン」が演奏され、会場のテンションは再び上昇した。その流れで「物語は2002年に戻る…」と語りながら「アイ・ウォーク・アップ・イン・ア・カー」のイントロが演奏されると、会場は2000年代西海岸エモ・シーンを牽引した伝説的バンド、サムシング・コーポレイトが蘇ったかのような盛り上がりを見せた。その後、「ファイヤー・エスケイプ~きみがいる世界」に次ぐ最新アルバムの人気曲「ソー・クロース」では、会場をライトアップされたダンスホールに。そして本編最後では、ソロ名義でのEP『The Pop Underground EP』収録のアンセム「シネステイジア」を演奏。ステージから会場に下りたアンドリューは、観客の間を歌いながら歩いたファン一人一人へ感謝の想いを伝えた。

アンコール一曲目は、サムシング・コーポレイトのセカンド・アルバム『ノース』の国内盤ボーナス・トラックとして収録された「ウォッチ・ザ・スカイ」が演奏された。アンコール二曲目はアンドリューのライヴ終盤の定番曲となっている「ラ・ラ・ライ」。心地よい大合唱が会場に響いた。そして今回のジャパン・ツアー最後の曲には、最愛の娘セシリアのために書かれた「セシリア・アンド・ザ・サテライト」が選ばれた。サムシング・コーポレイト、ジャックス・マネキン時代から、ソング・ライティング面での大きな飛躍を証明し、歌詞には現在のリアルなアンドリューの心情が反映されたこの名曲の大合唱でおよそ100分のパフォーマンスは大盛況のうちに終了した。今回のジャパン・ツアーは僅か二日間という短期間であったものの、「またすぐに来日するから待っていて欲しい」というアンドリューの言葉を信じて、次に日本でライヴを観ることが出来ること日が1日でも早く訪れることに期待したい。

■セットリスト

FIRE ESCAPE
CANYON MOON
WALKING IN MY SLEEP
HIGH DIVE
DEAD MANS DOLLAR
ISLAND RADIO
DARK BLUE
DON’T SPEAK FOR ME
MAPS
AMY I
I’M READY
SWIM
SHOT OUT OF A CANNON
I WOKE UP IN A CAR
SO CLOSE
SYNESTHESIA
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WATCH THE SKY
LA LA LIE
CECILIA AND THE SATELLITE